
安部 修平
代表取締役
「自己満足」を追求し、飲食業界をスマートに変革する挑戦
数字の世界から起業家への転身
代表取締役を務める安部の軌跡は、会計士の勉強から始まりました。
「もともと会計士の勉強を始めたのがきっかけで、会計の世界に深く入り込んでいた時期がありました」と振り返る安部。上場企業の経営管理部で7年半、経理の基礎から決算、税務、監査対応、内部統制まで、管理部門の重要な業務を一通り経験しました。
転機となったのは30歳を迎える前でした。「30歳をどう過ごそうかと考えて、とにかくビジネス書を読み漁りました」その中でたどり着いたのが"自己満足"という概念でした。
「自己満足というと自分勝手な満足と捉えられがちですが、そうではありません。自分が本当に満足するためには、自分に関わっている身近な人たちが幸せにならないと自分も満足しないし、自分自身もしっかりと成長しないと満足しない。つまり、自己満足するには周りを幸せにできなければいけないんです」
この価値観が、後の経営理念の根幹となります。
飲食業界との運命的な出会い
会計士時代の友人の紹介で、150店舗を展開する飲食企業のIPO準備に携わることになりました。ここで初めて飲食業界のリアルを目の当たりにします。
「一番驚いたのは、従業員の精神面のところです。労働集約型のビジネスなので、人のマネジメントに組織としての精神的一体感が重要視されている場面が多くありました」
数字と向き合う日々を過ごしてきた安部にとって、人の心や精神面の支えがいかに大切かを改めて実感する貴重な経験となりました。「人が最も大事なんだなと。人をどうマネジメントしていくかは奥が深すぎて、経営者やマネージャーの皆様は大変なことをやっていたんだなと気づかされました」
その後、「経営とは何か?」という疑問が湧いたことをきっかけに、MBAの取得を目指すようになります。3年間、仕事と並行しながら学び続け、特に人事(HR)、組織マネジメント、マーケティングの重要性について理解を深めていきました。
飲食業界が抱える本質的な課題
現在のFLAROが解決している飲食業界の課題について、安部はこう語ります。
「飲食DXなんて言うと、キラキラした大変革をイメージするかもしれませんが、実際はもっと地道なものです。飲食店が抱えている課題はとてもシンプルで、気づかないうちに手間のかかる業務が積み重なってしまっているんです。特に、事務作業や数字を出すためのアナログな作業など、現場の負担になっているものが本当に多いと感じています」
「現場に行くと、思っている以上に仕組みが複雑化していることが多いです。店舗管理、運営管理、本部管理のそれぞれの機能が部分最適となり、結果、システム同士がつながらず、どこかでエクセルやスプレッドシート管理に頼らざるを得ない。でも、それを一元化するだけで現場の負担が減り、組織全体の運営がぐっと楽になるんです」
「現状を正しく見える化」することから始まる変革
FLAROのビジョンは「飲食業界全体がスマートな経営管理を可能にする世界の実現」。しかし、その前段階として重要なのは基本的な管理の徹底だと安部は言います。
「今の状態を正確に把握できていない店舗は、実はまだ少なくありません。FLAROは、昨日までの数字を売上だけではなく、利益まで把握でき、課題の発見までをアナログ作業なしで実現しています」
「次のステップとしては、AIを活用し、状況に応じたアクションプランを提案する仕組みを目指していますが、現時点では、そこまでのニーズは限定的です。いま飲食DXで本当に求められているのは、"現状を正しく見えるようにすること"。現場の実情としても、『今どうなっているか』が見えづらいまま運営を続けている店舗が、まだまだ多いという印象です」
伴走型サポートによる真のSaaSモデル
競合他社との違いについて、機能面ではなく、事業モデルの本質的な違いを強調します。
「私たちが提供している機能自体は、正直シンプルなものです。各種データを連携し、必要な帳票をすぐに出せるようにしている。一見シンプルな仕組みですが、それによって現場が楽になり、継続的に利益を上げられるようになる。私たちは、FLAROが現場の課題を確実に支え、お客様の成果につながる存在であることを大切にしています」
「経営管理ツールは世の中に数多くありますが、導入して満足してしまい、活用しきれていない企業も少なくありません。本来、SaaS型のサービスは導入後の継続的な支援と活用が前提となるべきもの。FLAROでは、導入して終わりではなく、お客様の業務に定着し、成果を出していただくところまでをSaaSの本質と考えています」
専任のカスタマーサクセスチームが、導入後も継続してお客様に伴走し、課題解決と成果創出を支援し続ける体制。ツールの導入ではなく、成果の実現までをサービスの一部として設計していることが、FLAROの大きな特徴です。
お客様の「数字への意識」が変わった瞬間
FLAROの価値を実感するきっかけは、お客様から寄せられたフィードバックの中にありました。
「ありがたいことに、多くのお声をいただいてきましたが、特に印象に残っているのは、お客様の"数字への意識"が変わったという言葉です。『店長たちが数字を意識するようになり、それをもとに議論ができるようになった』と聞いたときは、本当にうれしかったですね」
「毎日朝礼をしたり、繰り返し説明したりしなくても、FLAROというプロダクトそのものが現場の意識を変えるきっかけになれた。それは、自分たちがつくってきたものの価値をあらためて感じる出来事でした」
ユニコーン企業を目指して ― 世界への挑戦
今後の展望について、安部は「ユニコーン企業を目指す」という明確な目標を掲げています。
「時価総額は、経営者としての覚悟を示す一つの指標だと思っています。数字が高いということは、それだけ世の中からの期待値が大きいということ。そこをどう高めていけるかに、挑戦し続けたい」
今後の具体的な展開として「グローバル展開」と「AIの活用」を挙げ、こう続けます。「FLAROのビジョンをより多くの人に届けていくためには、海外市場への展開やAIの活用が欠かせないと感じています。ただ、それらはあくまで手段であって、目的ではありません。私たちが本当に大切にしたいのは、プロダクトを通じてお客様の経営管理をスマートにしていくことです」
主体性を重視する3つの行動指針
FLAROの行動指針について、安部は3つのポイントを挙げます。
1. 新しいものが好きであること 「世の中の変化についていこうということです。そこについていかなかったらプロダクトも進化していかないし、業界が遅れてしまう」
2. やり切る姿勢 「プロジェクトや業務を途中で手放してしまう人も中にはいるかもしれませんが、だからこそ、自分ひとりで抱え込まず、周囲を巻き込みながら目標達成に向けて動くことが大切です。最終的に自分でなくとも達成できたのであれば、それは組織としての成果。自ら起点となって全体を前に進める意識を持つことが重要だと考えています」
3. ワンチーム 「個人の集団というよりは、チームで成功や喜びを分かち合えるような形になりたい。部署の垣根があるわけではないので、みんなで一緒にやっていく」
ワークライフの融合という新しい働き方
働き方について、安部は時代に逆行するかもしれないと前置きしながらも、独自の考えを語ります。
「"ワークライフバランス"という言葉がありますが、実際のところ、ワークとライフを完全に切り分けるのは難しいと感じています。一日のうち8時間を仕事に費やす以上、その時間をどう過ごすかは、人生の充実度にも直結しているように感じています」
「もしその8時間の中に、自分らしさや心のゆとりがまったくないとすれば、それは少し残念なことかもしれません。だから、仕事とプライベートがグラデーションのように重なり合う。完全に切り分けるのではなく、無理なく交わりながら、どちらの時間も豊かにしていき、仕事そのものをもっと楽しんでもらえたら嬉しいですね」
次世代の飲食業界を変えるリーダーへ
これからFLAROに参画する人材へのメッセージを聞きました。
「新しいものへの好奇心があり、責任感を持って物事をやり切る人。そして何より、チームの一員として自律的に動ける方と一緒に働きたいと思っています。特に重視しているのは"主体性"です。自ら判断し、責任を持ち、周囲を巻き込みながら成果を出していく──そうした姿勢を大切にしています」
「飲食業界には、確かに課題が多く残されています。だからこそ、変革の余地が大きく、やりがいも大きい。私たちの掲げるミッションは、"人が人にしかできないことに没頭できる世界"をつくること。その実現に向けた挑戦を、この業界から始め、いずれ世界に広げていきたいと考えています」
安部が追い求めている「自己満足」は、他者の成功や幸せを実現することによって、自らの達成感へと昇華させる──そうした利他的な経営観に裏打ちされた、静かな情熱とも言えるでしょう。
数字と人、両方を深く理解する経営者だからこそ見える飲食業界の未来。その実現に向けた挑戦は、まだ始まったばかりです。













